11/18シャンソンコンセールの報告

2023年11月18日(土)に自由が丘のマッカートニーにおいて開催された当協会後援のシャンソンコンセールは、満席となり、成功裡に終了した。
 河津延樹さんの司会で始まり、河津さんが数曲を歌ったあと、原洋子さんを紹介した。原さんはシャルル・トレネ(Charles Trenet:1913-2001)のシャンソンの名曲「詩人の魂」(L’âme des poètes)をまず歌い、バルバラ(Barbara:1930 – 1997)の「黒い鷲(L’aigle noir)」、レオ・フェレ(Léo Ferré:1916-1993)の「ミラボー橋(Le pont Mirabeau)」など計5曲を熱唱した。ここで第1部が終了し、休憩。
 第2部は、原さんがジョルジュ・ムスタキ(Georges Moustaki:1934 – 2013)の「私の孤独(Ma solitude)」など4曲を歌ったあと、最後にエディット・ピアフ(Édith Piaf:1915 – 1963)の「水に流して(Non, je ne regrette rien)」を力強く歌った。2007年に公開された映画「エディット・ピアフ 愛の讃歌」では、ステージに立つことは自殺行為だと言われたピアフが「後悔などしない。またゼロから再出発するのだ」という歌詞のこの歌を、劇場で絶唱するシーンをラストにしていた。原さんの熱唱もピアフに勝るとも劣らないものだった。原さんの歌う「水に流して」はYouTubeで聴くことができる:
原 洋子「水に流して」ーYouTube
 河津さんは、手品やコミカルなシャンソンでお客さんを沸かせた後、「私は自由が丘日仏協会の数少ない社会派である」としてボリス・ビィアン(Boris Paul Vian:1920 – 1959)の「大統領殿(Le déserteur、原題は「脱走兵」)を心をこめて歌った。「ムッシュ・プレジダン、お手紙をしたためました。お時間があるときにお読みください」で始まり、「かわいそうな人々を殺すために生まれてきたわけでありません」、「脱走することにしました」と続き、「憲兵に探させるなら、伝えてください。わたしは無防備だ、撃てばいい、と」で終わるこの歌は、イスラエル軍がガザ自治区に圧倒的な武力をもって攻め込んでいるニュースを毎日のように視聴する私たちに対して、なにか新鮮な感動を与えてくれた。いや、むしろ、「戦争の悲劇に傍観者でいることに慣れてしまったね」、「なにかをなくしたと思いませんか」と問いかけているようだった。
 このような気持ちにさせる河津さんの歌唱力は、この歌を日本に紹介したフォークルの加藤和彦を、イメチェンを狙ってこの歌を歌った沢田研二を、十分に上回るものだった。
 今回のシャンソンコンセールでは、精神的葛藤を正面から見つめるものを、それを乗り越えようとする意志を、歌うものが多く選ばれた。これらを聴いて私たちは生きる元気をもらったように思う。原さんの歌った「水に流して」の歌詞で言うなら、「またゼロから再出発するのだ」という気分になったのだ。

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